集落とまつりのなかにある食文化10

摩訶不思議!? 県南エリアで受け継がれる、お盆の送り団子

熊本県南部に残る、祭りや暮らしに根付いたマニアックでユニークな「食」を紹介するこのコーナー。

さて、今年のお盆も終わり、すっかり日常の生活に戻った…という方も多いかもしれません。お盆って、家族みんなが揃うので、ついつい美味しいものを食べすぎてしまいますよね。そして田舎のお盆では、各家庭に代々受け継がれるお盆のお膳や盆団子の風習もあって、これまた美味しそうなものがずらりと仏壇に並んでいると思います。

今回は、熊本県南部の一部の地域で目にする、ちょっと珍しい!?「盆だご(団子)」をご紹介します!

◆この盆だご、見たことありますか?

突然ですが、これ!みなさん、見たことありますか?

実はこれ、私のふるさと八代市坂本町でつくられる、お盆の「送り団子」なのです。
坂本町でも全地域ではなく、ほんの一部の地域で受け継がれているもので、地元では「しば巻きだご」とも呼ばれています。

「しば」とは「葉っぱ」のことで、この団子が包んである葉っぱ、「アカメガシワ」のことを指すようです。

近隣の芦北地域でも、この「しば巻きだご」と全く同じような見た目の盆団子をつくる風習があるようで、津奈木町では「おひょろさん」と呼ばれています。

盆団子には、8月13日にご先祖さまをお迎えする際に用意する「迎え団子」と、15日にあの世に送り出す際に持たせてあげる「送り団子」がありますよね。地域やご家庭によって、その団子の形や供える数など異なるとは思いますが、迎え団子は「精霊が帰ってきてお座りになるので、平たくしてあげる」とか、送り団子は「お土産として運んで持って帰るので、細長くする」とか、私も聞いたことがあります。


この「しば巻きだご」は、精霊送りのための送り団子です。

そのため、あの世に担いで持って帰ることができるよう、坂本町では割り箸など細長い棒に提げて、天秤棒のようにして供える家庭もあるそうです。

他にも、「あの世へ帰る途中、上り坂でつっかえないように小さめの団子を包んであげる」とか、「一人分が4個」「12個で1セット」など、同じ坂本町でも家庭や地域によって供え方が異なり、とても興味深いです。

◆「しば巻きだご」のつくり方

坂本生まれ・坂本育ちの私ですが、実は私の実家のあたりでは、このスタイルの盆だごは全く見かけません。初めて坂本町でこの「しば巻きだご」を見たとき、葉っぱでぐるぐる巻きにしてあるし、てっきり節句の「ちまき」かな?と思ってしまいました。これが盆だごだと知った時は、大きな衝撃を受けました。

この盆だごを、毎年いつもつくるというお母さんから作り方を教わってきたので、特別にご紹介いたしますね!


まず、梅雨前に収穫し、カラッカラに乾燥させたアカメガシワの葉を、水にもどしておきます。



団子をこねて、2枚重ねた葉の上部に団子を置きます。
両サイドと下部の余った葉で包み、紐でぐるぐる巻きにしていきます。


巻く時につかう紐は、植物のカヤだったり、棕櫚(しゅろ)だったり、昔は七島藺(しちとうい)を使っていた家庭もあったとか。


巻いていくと、こんな風に円錐形になります。あとはこれを、熱湯の中にいれて数時間ゆでるそうです。

私もいつかは、この「しば巻きだご」をつくってみたいと夢見ており…。
なんと今年のお盆に、見様見真似で初挑戦!
アカメガシワの葉は、事前に用意することができなかったので、近くに生えていたのを収穫し、生葉をそのまま使用しちゃいました。


カヤやシュロも、すぐ近くには見当たらなかったので、山いものつるを使って巻いてみました。これをゆでると、


完成!

かなり適当で、教わったつくり方からアレンジしちゃっておりますが、見た目はそれなりに「しば巻きだご」になりました!(ちなみに今回、お供え専用としてつくり、食べることはしませんでしたが、米粉と白玉粉でつくったのできっとご先祖さまは美味しかったはず!)

◆みなさんのご家庭の「盆だご」についても教えてください!

「しば巻きだご」のような一風変わった盆団子は、もしかすると他の地域にもたくさん隠れているかもしれません。みなさんの地域やご家庭に伝わる、ちょっと珍しい盆団子があれば、是非教えて下さいね!

目には見えない精霊の姿のためにお団子をつくり、お土産に持たせ、そしてそのお団子への細やかな心遣いも忘れない…。盆だごの風習から、そんな日本人の精神の美しさを改めて感じることができ、あたたかな気持ちになりました。

今後も熊本の主に県南地域に残る、暮らしや祭りに根付いたマニアックでユニークな「食」をご紹介いたします。

この記事を書いたひと

坂本桃子

2019年3月まで八代市坂本町(旧坂本村)に住んでいましたが、現在は水俣市の旧久木野村へ。
ふるさと坂本をこよなく愛し、ケーブルテレビの仕事を通じて知り合った地域のじいちゃんばあちゃんの家に勝手にあがって縁側でお茶をすることが一番幸せを感じるとき。
自称、「集落の奇祭研究家」。明日はあなたのムラのマニアックなお祭りにお邪魔しているかも。現在は、主人が発行している『水俣食べる通信』の広報部長も務めています。

ブログ一覧へ

ブログカテゴリ

5ツ星探索人